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顔のない街

顔のない街

Introduction

本作は、2023年に集英社「少年ジャンプ+」編集部と東宝が共同開催した「東宝×ワールドメーカー短編映画コンテスト」において大賞を受賞した『顔のない街』を原案とする短編映画作品である。
監督・脚本を務めるのは、短編映画プロジェクト『MIRRORLIAR FILMS』にも参加した新鋭・村上リ子である。
主人公・ミサ役には、『ルックバック』で注目を集めた俳優・吉田美月喜を起用。さらに、フェイスクリニックの院長役として香椎由宇が出演する。実力派俳優陣の共演により、不穏な緊張感が全編に漂うSFサイコロジカルホラー作品が完成した。

Story

舞台は近未来の日本。顔を自由に変えられる時代、同じ顔をした人々が街にあふれる社会。“ナチュラルの顔”で生きる大学生・ミサ(吉田美月喜)は、自身の鏡に謎の×マークが描かれていたことをきっかけに、不穏な違和感と不安に飲み込まれていく。やがて彼女はレイ院長(香椎由宇)の経営する有名クリニック「レイ・フェイス・クリニック」の扉を叩き、顔を変えるという選択に向き合うが——。

Creator

監督・脚本

村上リ子

1996年生まれ、慶應義塾大学卒。12歳から小説や脚本の執筆を開始し、初執筆小説『桃の季節』が田辺聖子賞で全国2万点中最優秀賞を受賞。初監督の短編映画『THE NOTES』(2021)が、山田孝之発起人のMIRRORLIARFILMSに選出され、2022年9月に全国ロードショー。観客人気投票で1位を獲得し、Filmarks評価は4.2を記録。『第28回プチョン国際ファンタスティック映画祭』ではアジアン・ディスカバリー・アワードを受賞。映画・ドラマ・MV・CMの監督・脚本・プロデューサーや、NFTプロジェクトのストーリー設計を務める。

Trailer

Cast & Staff

吉田美月喜
金沢友花 木内舞留 川口ゆりな 窪田彩乃
香椎由宇

監督・脚本:村上リ子

音楽:山城ショウゴ
撮影:杉本大和 照明:富谷颯輝 美術:秋元博 
スタイリスト:増田実茄 ヘアメイク:後藤麻里 赤松真樹
整音:吉田玲一 音響効果:徳永義明 編集:雨宮信二 
カラリスト:石川洋一 VFXディレクター:佐藤究
助監督:佐藤竜憲 橋本繁武 
制作担当:張淳安 坂本亮介 音楽プロデューサー:有馬由衣
製作:大田圭二 エグゼクティブプロデューサー:馮年 GEMSTONE Creative Label 統括プロデューサー:栢木琢也
プロデューサー:山﨑麻衣 稲垣護 大野瑞樹 加藤有紗
原案:西田充晴 (ペンネーム:奇多郎) 「顔のない街」
(東宝×ワールドメーカー短編映画コンテスト 大賞受賞作品)
制作プロダクション:GEEK PICTURES 
製作:GEMSTONE Creative Label
© 2024 TOHO CO., LTD.

Interview

村上リ子監督インタビュー

12歳のときに書いた小説『桃の季節』で田辺聖子賞を受賞。2021年の短編映画『THE NOTES』が全国上映され、中編映画『Fridge』は国内外の映画祭で賞を受賞。本作『顔のない街』を経て、着実にステップアップされている村上リ子監督にとって、GEMNIBUSへの参加とは?

東宝の方々と一緒に盤石の体制でものづくりができる、とても貴重な機会でした。脚本開発、キャスティングなど、様々な局面で心強さを感じると同時に、大変勉強になりました。憧れの場所であるTOHOシネマズ 日比谷での上映の機会も楽しみです。多くの方々に届くことを願っています。

『顔のない街』は、顔を自由に変えられる「フェイスチェンジ」が一般的になった近未来のディストピアを描いた、SFサイコロジカルスリラー。本作のテーマは、現代の美容整形や加工アプリへのアンチテーゼなのでしょうか?

いえ、本作のテーマは「アイデンティティの商品化」です。私自身は、整形自体を否定する気持ちはなく、自己肯定感が上がるならいいのではと思っています。一方で、自身でコントロールができなくなるとまた別の問題。必要以上の整形を勧めるクリニックや、行き過ぎたマーケティングには疑問を感じます。ファッション分野などで叫ばれる大量消費の文脈に、人間の顔やアイデンティティさえも乗ってしまうことの危うさに共感し、ハッとさせられました。原案の西田さんとお会いしたとき、水や土地など自然の中にある畏敬の対象だったものが、ボトリングされたり値段がつけられて商品になったというお話がとても興味深く。人間の顔やアイデンティティも同様に商品化されたとき、アイデンティティや自分らしさとはどうなるのだろう?と考えさせられ、これを膨らませて映画にしたいと考えました。

本作を撮ることになったきっかけを教えてください。

本作には原案があり、「東宝×ワールドメーカー短編映画コンテスト」で大賞を受賞した西田充晴(ペンネーム:奇多郎)さんの『顔のない街』という作品です。“World Maker” は、集英社の「少年ジャンプ+」編集部が開発した、誰でも映像コンテや漫画ネームを作成・投稿できるアプリ。それを使った作品のコンテストで、大賞を受賞した作品を東宝が映画化するという企画がありました。『顔のない街』は設定がとても面白く、ハッとさせられる内容だったので、ぜひやらせていただきたいと思い、これを原案に東宝の山﨑麻衣プロデューサーと相談しながら、脚本を練っていきました。

本作のテーマは、現代の美容整形や加工アプリへのアンチテーゼなのでしょうか?

いえ、本作のテーマは「アイデンティティの商品化」です。私自身は、整形自体を否定する気持ちはなく、自己肯定感が上がるならいいのではと思っています。一方で、自身でコントロールができなくなるとまた別の問題。必要以上の整形を勧めるクリニックや、行き過ぎたマーケティングには疑問を感じます。ファッション分野などで叫ばれる大量消費の文脈に、人間の顔やアイデンティティさえも乗ってしまうことの危うさに共感し、ハッとさせられました。原案の西田さんとお会いしたとき、水や土地など自然の中にある畏敬の対象だったものが、ボトリングされたり値段がつけられて商品になったというお話がとても面白くて。人間の顔やアイデンティティも同様に商品化されたとき、アイデンティティとはどうなるのだろうと考えさせられ、これを膨らませて映画にしたいと考えました。

映像化には、文章とはまた違う難しさがあると思います。映画冒頭の、主人公のミサが乳白色のプールに沈んでいくシーンは、顔が沈むまで肌と水のせめぎ合う様子が象徴的です。

冒頭のシーンは、広い空間にプールを設置し、乳白色のお湯をため、吉田美月喜さんに実際に仰向けで沈んでもらいました。ただ、テストの際に沈むと鼻から気泡が出てしまうことに気づき、時間もなく判断に迷いましたが、思い切って撮影し、気泡の部分はオンライン編集で馴染ませました。完パケを見て、世界観に引き込む素晴らしいカットになっており、撮れてよかったと感じました。

他にこだわった部分は?

脚本開発の中で、どうツイストやどんでん返しを入れるかは、悩んで何度も書き直しました。劇伴は重低音にこだわっており、映画館でないと聞こえない音もあるので、ぜひ映画館の環境で聴いてほしいです。
全体的な色味や美術などで、どのように不気味な世界観を演出するのかにも、かなりこだわりました。「フェイスチェンジ」により同じ顔の人が大量に歩いてくるシーンは、VFXをフル活用して制作しました。観たことのない光景だと思うので、ぜひ観ていただきたいです。

主人公のミサを演じた吉田美月喜さんには、どんなふうに演出をされたのでしょう。

ミサは、フェイスチェンジが普及した社会の中で、一度も顔を変えていない”ナチュラル”。ただどこか様子がおかしく、かなり複雑な心情や背景を持つキャラクター。吉田さんは設定について細かく質問してくださり、丁寧に演じられる方なので頼もしかったです。明るく可愛らしい方ですが、職人肌で勘がよく、こちらが撮りたいものをパッとできてしまう。脚本を面白がってくださり、熱心に準備していただいたと伺いました。ミサのキャラクターは、芯があり、ミステリアス。そんなミサ役を探していました。吉田さんは『ルックバック』の京本役などでも演技の上手な方だと思っていましたが、実際にお会いするとイメージにぴったりで、演技力も想像以上でした。

フェイスチェンジの施術をするレイ院長役の香椎由宇さんはいかがでしたか?

存在感が素晴らしいです。いい意味で、立っているだけで不気味さを醸し出せる。不気味なほどの美しさ。香椎さんにしか出せない説得力がありました。小学生の頃、テレビドラマでいつも拝見していた香椎さんはクールに見えましたが、現場でお会いする香椎さんは優しくお母さんのようで、とてもお茶目でキュートな方でした。そのギャップに魅了されました。ディストピアな設定でありながら、とても和やかな現場でした。

フェイスチェンジを躊躇する主人公の心のせめぎ合いを、演出的にどう伝えられたんですか?

まず設定について、フェイスチェンジをしているのが当たり前の社会で感じる同調圧力を意識してもらいました。学生時代は特に、友達と同じでないといけないような感覚に襲われます。それをランドセルの色や、みんなで顔をおそろいにしようというシーンで表現する、と説明しました。フェイスチェンジをしていないミサは、自分に自信がないわけではない。でも人と違っていいのだろうかと揺れています。

「顔はね、牢獄だったと思う」という印象的な台詞について聞かせてください。

他者は顔を見て、イメージのレッテルを貼ります。例えば、私は「喋る前と後で印象が変わる」とよく言われます。まったく違う顔ならまた全然違う印象を持たれるでしょう。顔の印象によって内面の一部が否定され、発言の受け取られ方も変わってくる。服装は着替えれば変えられるけど、顔は簡単に変えることができない。顔は牢獄のような側面を持っていると感じます。

村上監督が考える、これからの映画、または新しいエンタメ像をお聞かせください。

AIの精度が上がり、かなりクオリティの高い映像が作れてしまう。だからこそ、作家の癖(へき)のようなものが求められ、残っていくのではないかと思います。また、その場に行かないと体験できないこと、時間をかけないと作れないもの、再現性がないものが大切になっていくのではないかと感じます。映画館での体験も、約2時間スマホを見ずその作品だけに集中する体験というのはある意味貴重になっていくので、その一つになるといいなと思います。

小説家、脚本家、プランナーとして仕事をされ、でも映画監督を目指されたのは?

映画監督を目指したのは、未来に作品を残せる職業だと思ったからです。大学時代によくTSUTAYAに映画のDVDを借りに行っていて、生まれる何十年も前に作られた作品が今もアーカイブされて観られているというのは、とても夢があるなと思いました。自分も同じように作品を未来に残したいと思い、映画監督を目指しました。これを映画として残さないと、生まれた意味がない。生きているうちに、そう思えるものを撮りたいです。

撮影:杉本大和さんインタビュー

『新聞記者』や『余命10年』などの撮影監督・今村圭佑の右腕的存在で、「イクサガミ」ではBカメラを務めた杉本大和さん。CMから映画まで幅広く活躍するクリエイターです。『顔のない街』で、村上リ子監督と組まれた経緯を教えてください。

村上監督とは今回が初対面だったのですが、以前からお付き合いのあるGEEK PICTURESさんよりお話をいただいたのがきっかけです。特定の繋がりや若手を支援するという文脈ではなく、フラットに参加させていただきました。

サイコロジカルホラーを作るにあたって、画作り、世界観について、村上監督とどんなお話をされたのでしょうか?

いえ、本作のテーマは「アイデンティティの商品化」です。私自身は、整形自体を否定する気持ちはなく、自己肯定感が上がるならいいのではと思っています。一方で、自身でコントロールができなくなるとまた別の問題。必要以上の整形を勧めるクリニックや、行き過ぎたマーケティングには疑問を感じます。ファッション分野などで叫ばれる大量消費の文脈に、人間の顔やアイデンティティさえも乗ってしまうことの危うさに共感し、ハッとさせられました。原案の西田さんとお会いしたとき、水や土地など自然の中にある畏敬の対象だったものが、ボトリングされたり値段がつけられて商品になったというお話がとても興味深く。人間の顔やアイデンティティも同様に商品化されたとき、アイデンティティや自分らしさとはどうなるのだろう?と考えさせられ、これを膨らませて映画にしたいと考えました。

本作を撮ることになったきっかけを教えてください。

本作には原案があり、「東宝×ワールドメーカー短編映画コンテスト」で大賞を受賞した西田充晴(ペンネーム:奇多郎)さんの『顔のない街』という作品です。“World Maker” は、集英社の「少年ジャンプ+」編集部が開発した、誰でも映像コンテや漫画ネームを作成・投稿できるアプリ。それを使った作品のコンテストで、大賞を受賞した作品を東宝が映画化するという企画がありました。『顔のない街』は設定がとても面白く、ハッとさせられる内容だったので、ぜひやらせていただきたいと思い、これを原案に東宝の山﨑麻衣プロデューサーと相談しながら、脚本を練っていきました。

本作のテーマは、現代の美容整形や加工アプリへのアンチテーゼなのでしょうか?

村上監督は、ここは絶対こうしたい、ここの見え方はこうしたいと、ある種のこだわりがあったので、その部分のライティングや構図など僕のイメージはこうだけどこれで合っているか確認しながら進めていきました。絵コンテライターの方にも打合せに入ってもらい、絵コンテでもイメージを共有するようにしました。

透明感のあるブルーな色彩や質感についてはどちらのアイデアだったのでしょう?

色彩は、監督が持っていたイメージです。服は赤く見えるようにとか、顔はよく見えないぐらい落とすとか、背景は飛ばすなど共有しましたが、基本は監督の頭の中にあるイメージを作り上げていった感じ。僕は明暗を使った見せ方などを提案したくらいで、撮影監督システムではありませんが、ライティングは僕が案を出して、照明の富谷颯輝さんと作っていきました。

ライティングに関しては、大教室のシーンなど、観客の視点をスクリーンのどこに持っていくか、緻密に計算されているように感じました。

ありがたい言葉ですが、計算はしていません(笑)。脚本を読んだときに浮かんだ画を撮っていっただけです。

フェイスチェンジが常識というディストピア観はどう描こうとされたのでしょう。

一番は芝居です。芝居が成立していれば大丈夫かなと。映像的というより、芝居をちゃんと撮ろうと思ってやっていました。

この映画の難しさは、観客が顔に注目していないと、フェイスチェンジに気づかない可能性があること。そうならないように気をつけたことはありますか?

同じ顔でも、髪型や化粧、角度が違ったら気づかない、同じ人だと認識できないのではないかという話し合いを何度も重ね、なるべく正面から見せる構図にしました。とはいえ、無理やり顔を見せるのではなく、物語の流れでちゃんと見せられるようにと。

水に沈んでいくシーンや赤いワンピースの女性が迫ってくるシーンなど、小説なら想像で済みますが、映像の場合は撮影しないと得られない難しそうなイメージに関しては?

当たり前ですが、あの現場に同じ顔の人はいませんので(笑)、VFXディレクターの佐藤完さんと、恐怖や気味の悪い感じをどう描くかを事前に話し合いました。それができたのでいけるなと。

VFXチームとはどんな話をされたんですか。

脚本を読んだときのイメージは大体みんな一緒だったので、相違のないゴールに向かって具体的な話をしました。低い位置から同じポジションで撮影したものに、力技でマスク処理を施して同じ顔を置いてもらった。一番寄りのところは、カメラ位置も体の角度も変えず、顔だけ違う人を置く。そこを起点に首を繋いでいく感じです。顔の素材を撮るだけでは合わないところは少し大変でしたが。

現場での杉本さんは、村上監督にとってどんな存在だったのでしょう。

僕は、考えていることを具現化するサポートができたらと思ってやっていました。もともと演出をやっていたので、なんとなく芝居はわかるし、僕は芝居が良ければという考え方なので。

演出がわかるカメラマンなんて鬼に金棒ですね。

いいカメラマンはみんな芝居を見ることができると思います。

演出を経験されたとのことですが、カメラマンになられたきっかけは

日本大学藝術学部映画学科監督コースの出身ですが、高校時代は、スティーブン・スピルバーグ監督作品など大作映画しか観たことがなく、映画作りに、撮影や照明など専門の部署があることも知りませんでした。大学に入り、何に向いているか迷っていたとき、4年生だった藤井道人監督が、撮影の今村圭佑さんと自主制作を撮っていたんです。頼んで、演出部としてカチンコを打たせてもらううちに、絶対に監督になるぞという考えは薄れてきまして。今村さんと仲が良かったことや、企画を考えたり、脚本を書いたり、編集や演出をするより、撮影が面白いし、向いているのではないかと撮影部に転向したんです。

「イクサガミ」も藤井監督、今村カメラマン。学生時代から恵まれた環境でしたね。主演された岡田准一さんからは“未来の巨匠”と呼ばれていました。

ありがたいですね。いまもその延長線な感じです。でも自主制作を手伝っているときは、本当に全員お金がないし、飯も食えない、寝られないで、恵まれているとは一切思っていませんでした(笑)。ただ藤井監督とは編集の話ができるので撮りやすいですよね。逆に、村上監督とは初めてだったので、自分だけ編集点を理解してしまわないよう確認しながら進めました。うまくいったかどうかは監督に聞いてください(笑)。

若手監督の育成プロジェクトでもあるGEMSTONEに参加された手応えは?

僕は、ベテランではないし、胸を貸したという気持ちは一切なく、一緒に考えて作っただけ。そもそも話が来たから受けたわけで(笑)。若手を応援するなんて偉そうなことは考えていません。

でも一緒に大きくなる未来が見えて素晴らしいなと思いました。どんなカメラマンでありたいですか?

脚本に書かれたものをきちんと映像化できるカメラマン。「すごい」と思う画は主張しないので、意外と気づかない。芝居がきちんと撮れればいいんじゃないかと思います。

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