GEMNIBUS
Interview
『ソニックビート』音楽
PAS TASTA
6人から成る音楽ユニットPAS TASTA発足の話からお聞きします。オンラインコミュニティ〈FORM〉の「All Nighter」という企画から始まったそうですが。
phritz最初は、Kabanagu、hirihiri、ウ山あまね、僕の4人で、FORMの24時間以内に制作した楽曲を応募するコンピレーションアルバム制作イベントAll Nighterに参加したんです。結構、反響があって、そこにyuigotとquoreeも加わった。J-POP 畑でもないのに、パソコンで音楽を作っていた6人がJ-POP風な曲をリリースしたら面白いんじゃないかと活動を始めました。
『ソニックビート』の音楽を手掛けることになった経緯をうかがえますか?
phritzGEMNIBUSという企画のなかの映画に曲を提供いただけませんか? と、音楽プロデューサーの方から突然ご連絡いただいたのがきっかけです。関駿太監督がいちファンとして我々の楽曲を聴いてくださっていたとか。それでオファーいただきました。
橋本理央プロデューサー少し補足させてください。PAS TASTAさんにとっては突然だったと思いますが(笑)、僕と関監督の間ではこんな経緯がありまして。監督と僕の音楽の趣味はすごく似ていて、この映画の音楽は、最初からtofubeatsやパソコン音楽クラブみたいなデスクトップミュージックでやりたいと意気投合していました。そんな折、僕が一昨年、一番聴いていたPAS TASTAさんのアルバム『GRAND POP』の話をしたら、監督ももちろん大好きだと、これはお声がけしてみようという流れになったというわけです。監督がよく言っている、同世代感、同時代感を共有できる方にお願いしたかったので。
補足、ありがとうございます(笑)。どんな曲にするのか? どんなふうに使うのかなど、関監督とはどんな打ち合わせをされたんですか?
Kabanagu監督からは音楽が欲しいシーンの一覧と、具体的な音楽のイメージ、音数とか、どういうビートでとか、そのシーンの表現や質感についてまとめたメモをいただきました。その上で監督含め全員でミーティングをして、それぞれのシーンの解釈を確認し、掘り下げて膨らませました。車が加速するシーンでラジオから流れる曲は、もともと監督が自分らの〈BULLDOZER〉という曲を当ててくれていまして、ここも新たに劇伴を制作する予定だったのですが、あまりにもハマり過ぎているので、結局そのまま使わせてくださいという連絡が監督から来ました。映画を見たら、これ以外ないほどしっくりきたので、制作することになっていたら逆に困っていたかもしれません(笑)。
その他の場面の音楽制作のエピソードも教えていただけますか? また完成された映画をご覧になった感想もお願いします。
phritz劇伴の楽曲は5、6曲ぐらいで、曲数は意外と少ないんです。でも台詞のあるシーンと、自分らの音楽がガッツリ入るシーンのコントラストがはっきりしているので、ここにも音楽を入れたかったみたいなことはなく、良いバランスだと思いました。関監督との打ち合わせのときに監督の作風が見えたし、自分たち6人もそれぞれ得意な作風があるので、パートごとにここは誰の担当と決めてデモを作って監督にフィードバックをいただく流れで作りました。結果的に、やりたい方向性をそのままやらせていただいた気がします。
映画とのコラボはいかがでしたか?
Kabanaguめっちゃ楽しかったです。PAS TASTAでの劇伴制作は初めてだったのもありますし、普段はPAS TASTAの作風が強く出ている曲が多いので、作品に合わせて作っていく経験が面白かったです。
yuigotクライマックス的なシーンは、全能感と恍惚感に溢れたぶっ飛んだ音にしてほしいというオーダーだったんですが、自分のこれまでの電子音楽的な芸風からは離れた轟音のバンドサウンドに振り切ってみたところ、それが思ったよりハマりました。監督がうまく舵を切ってくれたおかげで、今まで使っていなかったポテンシャルを引き出してもらう、貴重な体験となりました。
phritz自分は主人公が陸上部に入部して、先輩と走っているシーンを担当したのですが、そもそも当てられていた仮の楽曲がかなりユニークで、自分のイメージとも全然違ったんですが、作ってみたら、違和感はありつつもすごくハマッていて。試写に行かせていただいたんですが、他の作品と比べて『ソニックビート』の音像はパンチが効いていてユニーク(笑)、それぞれの楽曲がすごく合っていると感じました。
hirihiri僕は、陸上部の練習のシーン担当でしたが、phritz君が途中まで作った曲を受け取って、手を入れたのをphritz君に戻すという形でやらせてもらいました。でも僕が触ったところはほとんど残ってなかった(笑)。良い形になっているからいいんですけど。普段自分ではやらない感じの音楽をやれたのは楽しかったですね。
quoree主人公のイサオが田んぼの道を帰るシーンを担当しましたが、のどかな感じに合った空気感を表現するのが少し難しかったです。でも楽しかったし、監督からのフィードバックも好評だったので良かったなと。映像があるのでいろいろイメージが湧き、それが一点に集中していく感じも面白かったです。
PAS TASTAとしての作品作りは、普段どんなふうに行っているんですか?
phritzシングルや、自分たちでリリースするものは、誰かがデモというか、初案を作って、Discordというアプリに投げたプロジェクトファイル(楽曲データ)に、それぞれが少しずつ付け加えて、完成を目指すというスタイルです。今回の映画は、一部、共作もありましたが、役割分担をして基本的に1人で作ったのも新鮮でした。
映画、映像作品の音楽制作の楽しさは、どんな部分ですか?
Kabanagu音楽だけではもたない感じの曲でも、映像がつくと聴いていられるというか(笑)。やれる作風の幅が増えるのが楽しかったです。いつもより密度感がなかったり、手数を詰め込まなくても、最小限の要素だけでいけるのが面白くて。むしろギリギリの要素で構成してみたいと思い、試行錯誤できたことが面白かったです。
phritzリスナーを飽きさせないために、音の密度や、音圧の部分をマックスまで上げていくことが多いのですが、映画館など大きい空間で聴くことを想定すると、ダイナミクスというか、小さな音から大きな音まで全てに意識を向けなければいけない。普段、曲を作るときは、あまりそこを意識することはないので、単純に楽しかったし、良い体験になりました。
quoreeもちろん場面によると思うんですが、 肩の力を抜いたほうがうまくいくことがあることを学びました。自分の制作スタイルは、すごく肩に力が入っているのでそうじゃないやり方でも曲は作れるんだと。すごく良い体験をさせていただきました。
yuigot先に映像に合わせて音を当てたのですが、音と映像がリンクしているので、映像表現としての揺らぎに、曲のテンポが影響を与えていて、曲だけとはまた違う時間の使い方を意識することができました。ここでの感情を少し引き伸ばしたいと思ったとき、その小節を映像に合わせて伸ばすことでその効果を感じられたり。音楽だけを作るのとはまた違う面白さがあって楽しかったです。
映画音楽の作曲家で気になる方、好きな方がいらっしゃったら、教えていただけますか?
Kabanagu山本精一さんが劇伴をやられた2006年のアニメ映画『マインド・ゲーム』に、めちゃくちゃ影響を受けています。
yuigot僕は、最近、『呪術廻戦』などアニメの劇伴をやられている照井順政さんです。バンド畑の方で、すごくテクニカルな音楽をやっている方ですが、テクニックの部分をうまい具合に映像に落とし込んでいる、あまりいなかったタイプの劇伴作家なんです。仕事をするときとても参考にさせていただいているんですが、昔からファンなので、いつかお話してみたいです。
quoreeたくさんいるんですが、 牛尾憲輔さんが好きです。 牛尾さんがやっている agraphというソロユニットをきっかけに名前を知るようになりました。どの作品も美しいだけじゃなく、奥行きがある。すごく憧れている方の一人です。
phritz自分は、GEMNIBUSの一篇『青い鳥』の劇伴もやっている haruka nakamuraさんがすごく好きで、tai hirose名義でアンビエントを作っていたりするんですが、影響されまくっています(笑)。旋律がとても丁寧できれい。音色なのか、録音の仕方なのかわかりませんが、すごく柔らかくて、『青い鳥』の映像にすごくマッチしている。好きなサウンドの一人です。
hirihiri僕は、蓜島邦明さんという方と、菅野よう子さんがすごく好きです。
『ソニックビート』を手掛けられた今、次に映像作品を手掛けるなら、どんなもの、ジャンルをやってみたいですか?
Kabanaguアニメの劇伴やりたいですね。
quoree被ってしまい申し訳ないんですが、僕もアニメの劇伴をやりたいです 。アニメがすごく好きで、めちゃくちゃ見ているので、アニメの劇伴をやれたらとっても嬉しいです。
yuigot僕は、映画、アニメに関わらず、戦闘シーンの音楽を書いてみたいです。台詞じゃなく、画で見せるシーンに音をどうハメるかということにすごく興味あって。ロボットアニメやバトルアニメの戦闘曲が好きなので、一度チャレンジしてみたいと思っています。
phritzPAS TASTAとしては、戦略的にもいろいろとやれることがあるのでアニメ作品をやりたいなと思っています。個人的には、劇伴がつくものなのかわからないんですが、ドキュメンタリーの音楽をやってみたいです。実写映画やアニメとも違う作り方がありそうで、チャレンジしてみたいです。
hirihiri僕は、電子音がたくさん鳴る、エレクトロニカに挑戦してみたいと思っています。