GEMNIBUS

東宝若手プロデューサー座談会

Interview

東宝若手プロデューサー
座談会

GEMSTONE Creative Label(以降、GEMSTONE)のもとで製作された、短編オムニバス企画GEMNIBUS vol.2。プロデューサーのみなさまに、プロジェクト全体についてお話を伺いたく思います。まず、今回、GEMNIBUSに初参加の方からその経緯を伺います。

橋本理央『ソニックビート』のプロデューサー、橋本です。経理財務部に所属しています。経理財務部に所属しながらもGEMSTONEでプロデューサー業務ができるのは、すごく魅力的だと思っています。

芝崎柊祐私は入社1年目の部署が、橋本と同じコーポレート部門の法務部でした。
プロデューサー志望なので、コーポレートの業務をやりながら、実際にプロデューサーを経験・勉強できるのは本当に魅力的でした。今回は山元のもとで、アシスタント・プロデューサーとしてアニメーション作品『もし、これから生まれるのなら』を担当しました。

山﨑麻衣私は中途入社という、みなさんとは異なるキャリアでこのプロジェクトに参加しました。前職までのキャリアで、栢木と一緒に映画祭の立ち上げや、音楽ライブやCMの制作はしていましたが、映画制作経験はゼロでした。まずは短編で映画プロデューサーの経験を積もうと、GEMSTONEに参加しました。

皆さん、能動的にGEMSTONEに参加されているわけですね。次はすでにプロデュース経験のある方から、お話をいただきます。

今井翔大僕は、普段は映画企画部におり、『ロマンティック・キラー』『汝、星のごとく』など長編をプロデュースしています。このプロジェクトには、vol.1から参加しています。普段は若手監督とご一緒する機会を作り出すのが難しく、オリジナルを作れる機会も少ないので参加しました。

疋田華恋『インフルエンサーゴースト』をプロデュースしました、疋田です。私は入社4年目で、現在は映画企画部で『ドールハウス』、『君が最後に遺した歌』を担当しています。プロデューサー志望ということもあり、バックオフィスの配属だった1年目の時からGEMSTONEに参加し、GEMNIBUS vol.1では『knot』でアシスタント・プロデューサーをしておりました。

山元哲人普段は、製作や編成をする映画調整部におり、最近は『8番出口』などを担当しました。GEMNIBUS vol.2では、アニメーション作品『もし、これから生まれるのなら』を担当しています。土海明日香監督とはGEMSTONEに参加する前に出会っていて、いつか何か一緒にやりたいと思っていました。でも映画調整部の仕事の場合、どうしてもバジェットが大きくなってしまうので、すぐには難しかった。そんなときにGEMSTONEの取り組みを知り、土海さんとアニメを作れるのならGEMSTONEに入りたいと参加させていただきました。

今回の作品で、それぞれプロデュースでポイントに置いたことを教えていただけますか?

山元土海明日香監督の『もし、これから生まれるのなら』の場合は、プロデュース的観点で2つあります。一つは東宝の型にはめすぎないようにクリエイターとコミュニケーションを取ること。東宝は、オリジナル作品が多いわけではないので、我々もわかっていない部分があると思い、なるべくクリエイターが感じていることを大切に取り組みました。もう一つは、逆にクリエイターに任せきりにしないこと。それでは僕らと一緒にやる意味がない。彼らのプラスになるよう、でも東宝サイドの見方も理解していただけるよう、丁寧に伝えるようにしました。商業性の部分は特に、今後、東宝で長編を撮るときに役に立つことを考えて話を進めました。

丁寧な話し合いは、難しくありませんでしたか?

山元一般的には難しいこともあるかもしれませんが、土海監督に関しては、きちんと耳を傾けてくれる方ですし、苦労はしませんでした。広告の仕事を多く手掛けていらっしゃった監督さんだからこそ、相手の話を聞くことに長けているのかもしれません。

芝崎『もし、これから生まれるのなら』は出産をめぐる作品ですが、私は出産を経験していない立場ですので、脚本を考える際は難しかったのが正直な所です。だからこそ一般的な観客の視点を維持し続けようとしました。土海監督はイマジネーション豊かな方なので、それをいかに良い形に膨らませて、描きたいお話と掛け合わせられるか、ということに丁寧に向き合いました。

疋田『インフルエンサーゴースト』でこだわったポイントは、大きくは二つあります。一つ目は、キャスティング。SNSホラーは、ティーンエイジャー向けの作品が多いイメージですが、今やどの世代も当事者の問題。少し幅広い世代に自分ごととして楽しんでいただけるよう、少し大人なキャスティングを心掛けました。本作は、他人にどう見られてもいいと思っていた主人公が、世間の視線に晒されることで雁字搦めになっていく物語。その主人公像が、魅力的なのに飾らない西野七瀬さんのイメージにぴったりだと感じ、あて書きで脚本を書いて出演をお願いしました。また、トップインフルエンサーの役は10~20代の設定の物語が多いのですが、実際にはトップを走っているのが30代半ばくらいの方々。そうしたリアリティやカリスマ性、さらにヴィランとしての存在感を考え、本郷奏多さんにお願いしました。もう一つは、VFXです。西山監督はVFXを駆使したリッチな画作りが得意な方なので、ジャパニーズホラーには珍しいフルCGのクリーチャーを登場させようと、企画当初から話しておりました。VFXチームに西山監督が長年タッグを組まれていた佐藤昭一郎さんを始めとする白組の方々が入っていただけたお陰で、ハイクオリティなクリーチャーに仕上がりました。

山﨑村上リ子監督の『顔のない街』も、とにかく視聴者の目線に立って企画を創ることを意識しました。加えて、監督やスタッフが、120パーセントの力を出せるような環境作りですね。良いものを作りたいと思えれば、必然的に100パーセント以上の力が出るものですが、環境が悪いとなかなか難しい。プリプロダクションから撮影、ポストプロダクションまで、みんなにモチベーション高くやってほしいので、プロデューサーとしては、そのバランスを意識しました。

山﨑プロデューサーが担当された作品は、両方とも監督が女性でしたが偶然ですか?

山﨑偶然です。ただ個人的には、監督に限らず、この業界で働く女性全員に、諦めることなく活躍してほしいと思っています。世界的に見ても、日本は特にこの業界で活躍する女性の割合が少ないと感じているので、応援したい気持ちが強いです。私自身は独身ということもあり、正直なところ働きづらさを感じることは少ないのですが、ご家庭を持たれている方は本当に大変だと思います。別のプロジェクトで、映画業界で働く女性スタッフの方々に直接お話を伺う機会があったのですが、その際に「環境改善を進めるなら、やはり東宝が率先して取り組むべきだ」と強く感じました。今後自分が長編をプロデュースする際は本格的に取り組んでいきたいですし、現場のみなさんの意見も積極的に聞きたいと思っています。

もう1本の作品、大川五月監督の『You Cannot Be Serious!/ユー・キャノット・ビー・シリアス!』は、思いがけない出産によってキャリアをどうするかと思い悩む女性の物語であり、先ほどのお話ともリンクしています。才能ある人たちが環境を理由に諦めざるを得なくなり、活躍できなくなってしまうのは本当にもったいない。全て解決するのは難しいですが、東宝としてその一助になることをやっていくべきだし、会社全体としてもそう考えていると思うので、私自身も推進する一人になれたらいいなと思っています。

今井僕は、増田彩来監督の『青い鳥』を担当しました。基本的にうちの会社が作るのは、商業性の高い作品だし、キャリアを積んだ後は、さらに商業的な作品作りにシフトしていく。今回は、オリジナルかつ監督のパーソナルフィルムのような内容。ならば監督が表現したいものに最大限トライしてみてもらいたい。必ずしもエンタメにする必要はないと思い、脚本づくりをしました。面白い作品になったと思います。

確かに東宝本体の作品は、どんな作品にしても商業性は大切にしていると思います。そんな中で『青い鳥』は、メランコリックというか、映像詩というか、6作品中、とびぬけて色の違う作品だと思いました。

今井すごく東宝らしくない。でもそもそも、このプロジェクト自体が、東宝らしくないのでいいのかなと。

確かに(笑)。

橋本関駿太監督の『ソニックビート』を担当した僕の中には、目標が明確に2つありました。そもそもこの企画を関監督でやることになったのは、関さんが受賞した、TOHOシネマズ学生映画祭GEMSTONE賞の副賞が「GEMSTONEでの映像制作に携われる権利」だったから。経緯が、他の作品と違うんです。受賞作の『ボウルミーツガール』は、今まで見た学生映画の中でダントツに面白かったので、1つ目の目標は、その作品より絶対にパワーアップさせること。あの作品は国内の映画祭でいろいろ賞を受賞したので、『ソニックビート』は海外の映画祭を狙いました。カナダ・モントリオールで開催されているファンタジア映画祭にノミネートされたのは、わかりやすいパワーアップになったかなと思います。もう1つは、ほかのプロデューサーも言っていますが、その監督の良さ、持ち味を活かすこと。関監督にとって初めての商業映画である本作は、彼の名刺代わりになるような作品にしなければならない。東宝作品としてのエンタメ感は担保しつつ、関監督の強みであるユーモアを壊さないように気を付けました。

GEMSTONEの進め方として、ある程度のところでプロデューサーが一堂に会して討論することもあったのでしょうか?

栢木琢也常に企画内容や進捗をメンバー全体で共有しあっていますが、全体で話し合ったのは、プロット段階でのブラッシュアップが多いと思います。あとはメンバー同士個々にコメントを貰い合ったりしていると思います。

個人的に声がけをされた方はいらっしゃいますか?

芝崎『もし、これから生まれるのなら』はアニメ作品なので、ビデオコンテがあり、少しずつバージョンアップして本編に近づいていくので、チームに都度共有していく中で「まだ未完成なのに泣いた」「劇伴の力でさらに素晴らしいものになった」など、その都度の声をいただくことができました。講評は土海監督の力になったと思います。

山元アニメの場合は、多くのクリエイターが関わるので、そういったフィードバックはありがたかったですね。特に、作品のメッセージに共感していただいた音楽の原摩利彦さんと坂本美雨さんのメッセージは、すごく励みになりました。

音楽が入るとだいぶ印象が変わりますしね。

山元母親の子守歌という設定で、テーマを中心に歌があったので特にそういった面がありました。

芝崎ベテランがいないチームだからこそ、意見をもらい合ったりしやすい環境だったかもしれません。

橋本『ソニックビート』は開発段階で、同期の今井にプロットや脚本を読んでもらいましたね。

栢木『You Cannot Be Serious! /ユー・キャノット・ビー・シリアス!』も結構議論になりましたよね。

議論はどんなふうに展開されたんですか?

山﨑『You Cannot Be Serious! /ユー・キャノット・ビー・シリアス!』は、社会的なメッセージをコメディで描く作品で、大川監督がとても得意とするところです。私は「いけるっしょ」と楽観視していたので、「取り組みづらい題材なのでは?」という意見は無視しました(笑)。ここは大川監督の演出力を信じるところだろうと思ったので。

加えて、キャスティングの影響も大きいと思います。主人公の母役の浅野温子さんは本当にチャーミングでパワフルな演技を見せてくださり、そこに黒島結菜さんの演技がシンクロすることで、本読みの段階から現場はもう大爆笑でした。お二人が作り出したその空気感に大川監督の演出が加わって、さらに面白い作品に仕上がりました。信じて良かったです。

GEMNIBUS Vol.2での経験は、今後の作品作り、監督との仕事にどう活きていきそうでしょうか?

山元ここを出発地点に、土海監督の次回作につなげたいと思っています。もちろんお客さんに見てもらうための作品ではありますが、映画祭関係者、さまざまなアニメ業界の方にお披露目し、土海監督の人と作品を知ってもらうポートフォリオになればいいとも思っていました。僕としては次の企画も一緒にやりたいと思っているので、その第一歩になったらと思っています。

疋田私も『インフルエンサーゴースト』が、西山監督の才能を世間に知ってもらうきっかけになればと思っていました。また、西山監督とは同世代ですが、ふだん同世代のクリエイターとお仕事する機会は東宝にはなかなかありません。今後、活躍されていく同世代の監督とこのタイミングでご一緒できたことは、東宝としても、私としても、すごく良い財産になったと思っています。

山﨑私は、『You Cannot Be Serious! /ユー・キャノット・ビー・シリアス!』『顔のない街』と作品を2本やらせていただいたので、確実に自信にはなりました。今、配信シリーズの企画を進めているので、そういったものすべてに活かしたいと思っています。もちろん大川監督、村上監督のネクストキャリアも応援していきたいです。『You Cannot Be Serious! /ユー・キャノット・ビー・シリアス!』はもともと長編の企画を短編にしたものなので、それをベースに長編、または配信シリーズで、他の若手監督も含め、製作できたらサステナブルな関係が作れるんじゃないかと思っています。いきなり東宝本線で成立させるのは難しいとしても、若手監督がキャリアを積める場所を作れたらと思っています。

演出は、やはり机上の理論より、経験が実になりますものね。

山﨑そうですね。でもビジネスなので、なかなか大きい予算をボンとつけるわけにはいかない。でもシリーズものなら、ショーランナーといわれるトップの監督のもとに、複数のエピソード監督が紐づく形なので、そこがうまく機能すれば若手監督にとってポジティブな経験を積める場所になるかなと。

芝崎山元も言うように、土海監督は宮崎駿監督や新海誠監督のように、たくさんの人に愛されるクリエイターになっていってほしいと思っていますので、東宝がサポートできることは最大限やりたいと思っています。
また、アニメのクリエイターたちが、自分の名刺代わりに、才能を広めることのできる機会を東宝が作れたらいいなと、この経験を通して思いました。
私は、(アシスタント)プロデューサーとして初の作品がこのアニメだったので、本当にたくさん勉強させていただきました。次はプロデューサーとして、自分の企画をやっていきたいと思っています。

今井僕も、増田監督に、「次、何やりましょうか?」というのが一番大きな目標ですね。

橋本将来、東宝で長編映画を撮れる監督を発掘するのが、そもそもこのプロジェクトの目的なので、関監督がそうなっていくのが一番。実際、ちょっとパワーアップさせた企画を立ち上げているところです。僕が好きな作品群を作っている制作プロダクション、P.I.C.S.(ピクス)さんとお仕事できたのも嬉しかったので、「またやりたいです」とラブコールも送っています(笑)。

これは若手監督の育成プロジェクトですが、若手プロデューサーの育成でもありました。vol.3ではさらに学べることも増えると思いますが、海外展開を含め、GEMNIBUSをどんなふうにお考えですか?
まず栢木琢也総括プロデューサーにお聞きします。

栢木今回、『ソニックビート』と『顔のない街』の2作品が海外の映画祭にノミネートされました。橋本、山﨑と一緒に現地に行ったことで、プログラマーの方々とコネクションができたのは、とてもプラスになったと思います。海外作品の傾向、どういうものが観客に受け入れられ、または評価されているのか肌で感じることができましたし。

今回の経験を活かし、次はどんなスタートになる予定ですか?

栢木『GEMNIBUS』 シリーズは制作に限らず企画選定や上映形式など、常に改善と挑戦を重ねていきたいと思っています。そして、今回はじめての取り組みだった海外映画祭への挑戦は正解だったと振り返っているので、得たノウハウを活かして続けていきたいと考えています。
GEMSTONEとしては、映画に限らず、いかに、クリエイターの皆様の可能性の幅を広げる場所にいていくか考えて続けていきたいと思っています。

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